核融合を目指したプラズマ中の乱流のレーザー計測に関する学位論文執筆から幾年か経って、電子版が主流になってきたので、自分もPDF版を作成したいと思っていた。ところが、この10数年でコンピュータ環境がかなりかわってきて、なかなか難しい状況であった。
○原版の作成環境
Macintosh OS 7.5 であったように思う。PowerPook170を用いた。
本文:WordPerfect 3.1(J) (WordPerfect社、Novel社、Corel社と変遷)
図: ClarisDraw (Claris社)
主なプログラミング言語はThink C およびその後継の Symantec C++であり、Macintosh標準のPICT形式でグラフィックを保存するようにプログラムを作成し、ClarisDrawにペーストした。グラフ作成にSynergy Software社 KaleidaGraphやwavemetrics 社Igor Proを用いた場合でも、上記同様にClarisDrawにペーストし、色の編集やキャプション、ページ番号の追加をおこなった。
○作成方法
文章と図と表を別々に作った。文中に図を貼り込むDTPソフトもあったが、高価で学生には手が出せなかった。手作業でページをあわせ、偶数ページと奇数ページに仕分けした。まだソーター機能はおろか、自動フィーダー付きコピー機も現れていない。両面コピーは頻繁に紙詰まりを起こしていた。
そこで、両面コピーには、まず奇数ページをコピーし、次に再度方向をそろえてフィーダーにセットし、偶数ページをコピーすることにした。A3用紙に2面同じページものを並べ、地元知人の印刷業者にお願いしてそれをA4に裁断し、製本してもらったように記憶している。
○その後のパソコン環境の変化
Macintoshでは、いわゆる68k CPUからPowerPC搭載、さらにIntel搭載へと変化し、過去のソフトウエアが次第に使えなくなってきた。主流となるワープロソフトもかわり、日本語フォントの互換性も失われてきた。WordPerfect もClarisDrawも販売、サポート終了となり、なかば諦めていた。
本作業を行おうと思い至ったきっかけとなったのは、ClarisDrawのファイルが編集できるIntaglioというソフトの発売、および英語版WordPerfectを動作させるため、OS X 10.6 Snow Leopardで動作する SheepShaverというオープンソースのPowerMacエミュレータとバンドルされたパッケージ(WPMacPPC)がリリースされたことである。
SheepShaverは単独でも入手可能であるため、当初、自分が所有する昔のOSをそれにインストールすればよい、と思っていたが、実際にやってみると一筋縄ではいかなかった。以下問題点の具体例を挙げる。
- MacBook Pro (13 inch LCD, Intel Core 2 Duo, 2.53 GHz) , OS X 10.6.8 SnowLeopard を使用。
- 動作には、旧PowerMACのROMの情報が書かれたファイルが必要とのこと。それを抜き出すソフトは少なくともClassicサポートされている旧MACのOSでしか動かない。
- WordPerfect (WP)3.5e英語版では日本語動作が不安定。
- WPに付属するSheepShaverにバンドルされているOS7.5は英語版であり日本語表示がされない。
- WPバンドル版はROMもそのディスク内にある(ソフト経由でのみ閲覧できる)
- ソフトウエア内に確保されていたDiskの大きさがファイルサイズギリギリであらたなOSを入れるスペースはない。
○具体策
そこで、WPバンドル版のSheepShaverのエミュレート機能のみ使い、SheepShaverを立ち上げた状態で、別のインストールディスクを1GB程度確保し、そこに日本語版OS9を入れることにした。そこにWordPerfect(J)をインストール。内部にディスクスペースを確保する仕様のため、この作業の結果、WPアプリケーションの容量が大幅に増大。
OS9が立ち上がることが確認されたが、 再度別の問題が明らかになった。OS9にはそれ以前では標準的であったリュウミンライトというフォントがバンドルされていない。学位論文はこのフォントで書いたので、フォントが変わってしまい、結果としてページ区切りがバラバラになってしまう。
そこで、後にOS7.5.1 CDからフォントのみインストールしたところ、対応できた。
日本語WPは以前より保管しておいた3.1、 数式フォントとWP ビットマップフォントを追加した。
○具体的PDF化作業
共有ディスクを定義することで、OSX側とエミュレータ側とで同じデータにアクセスできるが、もともと日本語環境のエミュレータではないせいか、日本語が文字化けしている。これはどうしようもなさそうである。
WerdPerfectやClarisDrawのフィルタ名が文字化けしていると正常に機能しない場合がある。その場合、面倒だが手動でMacOS上でファイル名を書き換える。OS XでStuffitに圧縮し、MacOSで解凍すると正常になる場合もあるが、できない場合もあった。
以前使っていたAdobe PDFwriterを機能拡張にいれて、プリントコマンドでPDFを作るようにした。圧縮などの設定がデフォルトの場合、previewで開いたときにひどく文字化けする。そこで、圧縮なし、フォントを全部埋め込んでPDFをつくると、ほぼ見た目通りになった。
ただし、このPDFファイルをAcrobatで開くと、数式や一部のフォントが化けていることがわかった。WordPerfectは数式機能が先駆的であったが、これで書かれた式は特に文字化けが顕著である。
そこで、previewでいったん、「別名で保存」を行うことにした。これで無駄な埋め込みフォントなどが整理されて、見た目どおりになるようである。
あとは、仕上がりを見ながら、原文の微修正を行い、確認した。たとえば、| | はリュウミンライトフォントでは上下にわかれてしまうので、timesフォントに直す必要があった。
このようにして、WordPerfectの原稿をPDF化し、それにClarisDrawファイルをIntaglioで修正してそれもPDFに書き出し、Adobe CS4パッケージに含まれるAcrobat 9 Proで統合、ページの再配置を行った。
時々、Intaglio で「メモリ不足」として開けないファイルがある。その場合、MacOSのClaris Drawで再編集してみる。それでもIntaglioで開けない場合には、ClarisDrawでPICTに保存する。それをIntaglioで開くことができるが、編集はできない。あるいは、ClarisDrawからPDF化する(フォントはMacOS対応のままになる)。
余談:
英文であれば、WordPerfect3.1(J)をRTFに保存してそれをMS wordで開くとギリシャ文字、数式を除いてほぼ再現できるようである。日本語は変換されないようなので利用できない。
英文であれば、WordPerfect3.1(J)をRTFに保存してそれをMS wordで開くとギリシャ文字、数式を除いてほぼ再現できるようである。日本語は変換されないようなので利用できない。
○作業後記:
書物の場合、保存状態がよければ100年あるいは1000年でも保存可能であろう。しかし、電子ファイルは、そのフォーマットやフォントが変更になると、いつまで互換性が保たれるのか、甚だ疑問である。実際、たかだか数年のうちに読めなくなってしまったフォーマットも少なくないであろう。今後の電子ファイルの変遷にも注視していきたい。
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<手順のまとめ>
- WPMacPPCのインストール
- その中のSheepShaverより、別ディスク領域を確保
- そのディスク領域のフォーマット後、MacOS 9.0(J)をインストール
- フォント「リュウミンライト」を(おそらく)MacOS 8以前のCDからインストール
SheepShaverの共有ディスク機能で必要ファイルをコピーする
- WerdPerfect 3.1 (J)をコピー、フォント、初期設定をコピー
- Claris Drawのコピー
- PDF Writer(プリンタ)を機能拡張にコピー OS9.1以降では、PDF Writer(ver 4?)が使えない。このあたり、対応OSや機能拡張などの条件が複雑であった。
- Intaglio にてClarisDrawファイルを開く。できるかぎりフォントをリュウミンライトからMS 明朝に入れ替えておくほうがよいであろう。
- WP文書はPDF WriterでPDF化、ClarisDrawファイルはIntaglio経由でOS XでPDFに保存(プリント設定で)し、それをさらに、OS標準のPreviewで別名で保存する(するとAcrobatで数式が化けない)。
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<手順のまとめ>
- WPMacPPCのインストール
- その中のSheepShaverより、別ディスク領域を確保
- そのディスク領域のフォーマット後、MacOS 9.0(J)をインストール
- フォント「リュウミンライト」を(おそらく)MacOS 8以前のCDからインストール
SheepShaverの共有ディスク機能で必要ファイルをコピーする
- WerdPerfect 3.1 (J)をコピー、フォント、初期設定をコピー
- Claris Drawのコピー
- PDF Writer(プリンタ)を機能拡張にコピー OS9.1以降では、PDF Writer(ver 4?)が使えない。このあたり、対応OSや機能拡張などの条件が複雑であった。
- Intaglio にてClarisDrawファイルを開く。できるかぎりフォントをリュウミンライトからMS 明朝に入れ替えておくほうがよいであろう。
- WP文書はPDF WriterでPDF化、ClarisDrawファイルはIntaglio経由でOS XでPDFに保存(プリント設定で)し、それをさらに、OS標準のPreviewで別名で保存する(するとAcrobatで数式が化けない)。
- OS XのAcrobat Proで本文、図、表のPDFをれぞれの統合、ページのソート。
------同業者向け-----------------------------------------------------------------
○博士学位論文(PDF) (1997年2月 九州大学)
「レーザー位相差法を用いた高温プラズマ不安定性の実験的研究」
短縮URL [ http://bit.ly/KadoPhD ] 2012年9月29日(PDF化)
100ページ弱で、わずか2MBに。。。
(当時は等高線の描画など、重かった印象だが、所詮線描画。。。。)
-- 等高線を書くプログラムもアルゴリズムにもとづいて自作。
論文データベース:
http://mars.lib.kyushu-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000002GAKUISYOSI_7271
参考:
○本学位論文の内容をスペクトル計測の観点からまとめたもの
「レーザー位相差法(LPC)によるプラズマ密度揺動スペクトル計測の実際」
プラズマ・核融合学会誌 76(9), 889-902, 2000-09-25
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003825515 (CiNii)
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2000_09/jspf2000_09-889.pdf (JSPF)
------同業者向け-----------------------------------------------------------------
○博士学位論文(PDF) (1997年2月 九州大学)
「レーザー位相差法を用いた高温プラズマ不安定性の実験的研究」
短縮URL [ http://bit.ly/KadoPhD ] 2012年9月29日(PDF化)
100ページ弱で、わずか2MBに。。。
(当時は等高線の描画など、重かった印象だが、所詮線描画。。。。)
-- 等高線を書くプログラムもアルゴリズムにもとづいて自作。
論文データベース:
http://mars.lib.kyushu-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000002GAKUISYOSI_7271
参考:
○本学位論文の内容をスペクトル計測の観点からまとめたもの
「レーザー位相差法(LPC)によるプラズマ密度揺動スペクトル計測の実際」
プラズマ・核融合学会誌 76(9), 889-902, 2000-09-25
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003825515 (CiNii)
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2000_09/jspf2000_09-889.pdf (JSPF)
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