2012-09-16

- 小学校から使える元素周期律暗記表(案)-

 最近は,「元素」ブームなのだろうか.

文科省サイトでは「一家に1枚 周期表」が公開されている.
筆者も科学博物館の元素展「元素の不思議」に足を運んでみたが,けっこうマニアックで面白い.
 小学生でも,この規則的な並びと名前はけっこう興味を引くようで,覚えようとする子も少なくないであろう.

 20までの,水兵リーベ....であれば,中学生以上の皆が知っている語呂合わせを紹介できる.ところが,現在よくテレビなどででてくる元素には,チタン,ニッケル,銅,銀,金,バリウム,さらには,原子力や放射線分野で重要な,セシウム,ヨウ素,ウラン,プルトニウムなどなど,,20まででは追っつかない.

 そこで問題に直面する(大袈裟?).大学受験生向けには,様々な覚え方が提案されており,筆者も予備校時代に覚えたのだが,それらは,子供に教えるにあまりにはばかられるような言葉の羅列で.....(笑)

 ならば,はじめから小学生(の女の子)が大声で暗誦しても問題なさげなもの,という条件付きで考案してはどうか...... というわけで....
 
具体的な作成基準・方針は以下.
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<原則>
- 有名なものがあればそれを利用あるいは,一部修正
- "できるかぎり" 品性を保つ(笑)
- 個々の周期や族だけでなく,全体を見渡せるような暗記表にする.
- なるべく科学的に意味のある分類にする.例えば遷移元素(3-11族)と亜鉛族(12族)は横,亜鉛属以外の典型元素(1, 2, 13-18)は縦列.なお,12族(亜鉛族:Zn、Cd、Hg)は典型元素に分類されるのが一般的だが,遷移元素に含むべきとする説も少なくない.)
- 無理に語呂にする必要はない(こだわりを捨てる).
 (少ない組み合わせなら子供はすぐに覚えられる.響きや調子はよいほうがよい.)
   表中[ ]内の文字は読まない(情景明示や説明のために載せた).
- アルファベット,スペル由来,ローマ字はなるべくさけ,日本語名を基本とする.
  (Cl:塩素のみ「クラ」を当てた.水兵リーベ..と同じだからご容赦)
- どの音がどの元素に対応するか混乱をさけるため,つなぎの言葉を少なくする.
- ランタノイド系以降は読みも複雑なので,むしろそのまま頭部分を採用する
   出だしは「蘭競りのプラン(計画)」で覚えても良い.
- アクチノイド以降で人名が対応するものは順番の暗記よりも人物に親しんでもらう.
  出だしは「アク取りのプロ(名人)」から.
(アク取り名人を意識すると「プロ」とランタノイドの「プラン」を混同しない?)
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<覚えるため,間違えないための工夫と注意>
- なるべく1つの語呂に複数の元素が対応しないようにしている.
  [Ti = 散った, Fe = 鉄,  Tc =てくネ, Te = てっ, Ta = たん, W = たんグ,  Tl =たり ] とあてる.   
         (FeとTeは近いが,Feはそのまんまなので迷わない)
- 間違いやすいものもある.以下は特に注意.
 [V- Ba = ば, Ni-Nb =に, Na-Pb = な] は重複.
    [Li = リッチ, P =リ] 
 [Se = せ,Cs = せし]
 [Ru = るて, Lu = ル(ッ)テチ]
    [Rn = ラン, Ra = ら]  (縦では希ガスと,バリウムラジウムの並びなので語呂がよい)
   ( [Ga = が,Ge = ゲルマ] )   Gで覚えるわけでないので,誤解すくないかな?.
- 縦横のチェックポイントを入れている(赤字).
         31-36は横に読んでもなんとなく文章になっている(21-30に続けても).
   銅 - 銀 - 金 の縦列は覚えやすいので確認に.
   ランタノイド,アクチノイドでは,Eu(ヨーロッパ)とAm(アメリカ)でチェック.
(今話題のレアアース(希土類:17元素) "Sc-Y-ランタノイド" も確認)

(2017.1   追加)
81-86;   縦とのクロスチェックにも.
 足りん-な-ビッ(クリ)-ポン-阿修 羅どん    //  -- 厚いラードでもよかったかな^^.
  Tl       Pb    Bi             Po       At    Rn
 [ヒ素As (arsenic) と アスタチンAt(astatine) 間違えないよう] 

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<運用>
言葉の解説や場面のイメージなど,始め多少は大人やあるていど把握できている人のインストラクションが必要に思います.
   * なお,これまで数え切れない方々が語呂合わせを作ってこられたと思うので,オリジナルと思っていても,偶然の発想の一致等もあるかと存じます.教育用途ですので,ご容赦いただければ幸いです.

(2017.1 追記)
概ね目安として,水兵リーベ,,を覚えたあと,
(1) 縦8つ,
(2) 縦を確認しながら横に54のキセノンまで,
(3) 95のアメリシウムまで,
(4) あと趣味^^で,残りを制覇,
     と進めばいいと思います.(1)は受験にも役に立つでしょう.(2)までに日常目にする元素が大部分含まれると思います(+タングステン,白金,金,水銀ぐらい).(3)まで覚えれば,原子力・放射線材料まで網羅.これで無敵です ^^/ .(4)までいくと仙人の世界(笑)ですが,人名くらいは知っておいて損はないかもしれません.

注:実は,水兵リーベは ドイツ語Liebeだったり,B, C, N, O, Si, P, S, Cl, Ar, と半分近くが元素記号との対応なので,小学生には向かないかもしれない.一列目は「水兵さん」とだけ伝えて,(1)の後に族の順番をあわせながら水兵リーベの節を教えるのも一案かもしれません.

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<ダウンロード>

印刷・練習用PDF [PeriodicTableforKidsJP_Kado_all.pdf]     ← 下の埋め込みの原本です.
今後マイナーな改訂はおこなわないとも限りませんが,公開してみることにしました.





配色は,子供向けに,元素毎にユニークなキャラクターを対応させた「科学キャラクター図鑑 周期表―ゆかいな元素たち 」(エイドリアン・ディングル (著), サイモン・バシャー (イラスト), 藤田千枝 (翻訳) ;玉川大学出版部)を採用しました.あわせて利用し対応づけることで,記憶が定着しやすいのでは,と思います(出版社の回しもんではございません ^^; むしろ) ------>  玉川大学出版部さん追加出版しませんか?  --- まあ売り込みにでも行かない限り目に止まることはないですか ; 笑 .

 我が子は周期表だけみて,本の中身は読んでないようです(教育は長い目で.)... 18族(希ガス)のキャラが全部同じ形だということに気づいて「ポアポアちゃん」と呼んで気に入っています.
 いくつか初案から修正(方針にあわせた改善)しているのですが,初案のほうがいいと言ってます.最初に覚えるものの印象が強いんでしょう.

 たまたまこのページを目にし,実際に使ってみられたかた(生徒さん,親御さん,先生?)がおられましたら,感想など興味あります.

本ページ 短縮URL [ http://bit.ly/KDptable ] 
参考 - 周期表 wikipedia
2013.4.23   解説微改訂.
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2017.1.7    ニホニウム命名(2016.11.30)を機に改訂.
112 コペルニシウム(Cn):2010.2.19 (コペルニクスの誕生日)
114 フロレビウム(Fl)  2012年:ドゥブナ研設立者ゲオルギー・フリョロフ氏
116 リバモリウム(Lv) 2012年:アメリカの研究所ローレンス・リバモア国立研究所
 はすでに命名されてます.

2016.11.30  IUPACによる発表
113  ニホニウム (Nh):理化学研究所,森田浩介博士らのグループ
115  モスコビウム (Mc):ドブナ研所在地であるモスクワ州(モスクワ市ではない)
117  テネシン (Ts):テネシー州;ハロゲン元素(17族)の末尾 -ine
118  オガネソン (Og):ユーリイ・オガネシアン氏;希ガス(18族)元素末尾 -on
https://iupac.org/iupac-announces-the-names-of-the-elements-113-115-117-and-118/

113-118 の覚えかた(案)は
 [日本(の)風呂 もス リッパ でねおっかねーし]
        Nh          Fl    Mc       Lv      Ts           Og

参考:幻のニッポニウム。1908年に43番元素として発表されたが,実は1925年に発見されることになる75番のレニウムであった(取り消し).当時X線分光装置が入手不能であったため,同定ミス.一度取り消されたものは混乱を避けるため使えないルール.
43番元素は天然には存在せず,1936年にサイクロトロン加速器で合成されたテクネチウム

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2012-09-11

- 震災から1年半 -

震災から1年半が過ぎました.生活,物の考え方,科学や技術に対する意識がずいぶん変わったように思います.思うようにいかないことも,思うようにならないことも,思うようにできないことも,また思いも至らなかったことも多々ありましたが,まだ事態は収束しておらず,自分の出来ることを粛々とやっていくより他にないと思っています.

 自分自身はもともと原発や放射線の専門ではなく,このような事態になるとは思っていませんでした.なんとなく,安全神話というか,なんとかなる,してくれるもの,という意識がありました --- 3.14の3号機水素爆発の頃までは....(2度目が防げなかったことにショックというか,呆然というか....)

 専攻では,震災数日後に対策・検討会がつくられ,ほぼ連日会議がありました.東大原子力も東海村の施設が被災して,大変な様子でした(そちらの方々は家族を犠牲にして施設に泊まり込み,法令に従って放射線モニタリングを続け....).原発についてはこちらでも対策案なども検討しましたが,現実は,東電や保安院等の現場ですでに,ありとあらゆる対策案が検討されており,外野からの擾乱はかえって迷惑になっているのでは,との印象となり,むしろ長期的な工学教育などを重要視すべきでは,との方向にシフトしていきました.わかっている範囲だけでも積極的に情報発信すべき,という意見もありましたが,それも叶わず,各教授個人は政府の委員会など,奔走しておられたのですが,(はっきりいうと)組織として民衆側に 立つ(安全側でも危険側でもなく,今わかっている科学的見地から,人々の不安を和らげ,判断の一つの根拠を与える役割を果たす,という意味です)ことができませんでした.いまでも悔しく思っています.

距離は概算,Kita Ibarakiが正しいつづり
(当時のまま 2011.3.15 23:00頃作成)
3.15の早朝,東海村の施設で放射線量が上がり,法令に従い東大から文科省へ通報しました[原子力災害特別措置法に基づく10条通報].私は茨城県の公開データをみて,15日の(多分)夜までには,風向き,速度から,早朝の上昇は福島での前日夜の事象由来,3回"なにか"がおきた,と判断しました(専攻内にはメールで伝えていました).(後に2011年5月に東京電力がプラントの詳細データを公表し,その「何か」が,原子炉の減圧操作と関係しているのでは?と推察しましたが,確信はもう少し後)でした.はっきりしていることは,この事象は15日早朝の2号機破裂音(報道)の前(18~21時頃)のはずだということです.以降,各地の空間線量率と公開された原子炉圧力などのパラメータの記録,分析を始めました.

  (恥ずかしながら)SPEEDIの存在は確か3月20日頃知ったように思うのですが,そのような大型計算機による情報がなくても,公開情報だけでどこまで予測ができるのか,そのようなことも念頭にありました.SPEEDIの情報をもとに逃げる方向を変えるのは現実的ではないでしょうが,少なくとも,プリューム通過中なら屋内退避,雨の予報がでていれば保育園などの小規模な園庭や植え込みのビニールシートカバーぐらいはできたのでは,と思いました(耕地や山林は難しかったと思います).----- 実際は事が起きないと何とも言えない部分があるもの事実です.

 そういう経緯で原子炉,放射線,放射線防護(ICRPも)等をはじめて本気で勉強することになりましたが,半面,自分の研究(プラズマ・核融合)は半年以上完全にストップしてしまい,十分な学生指導もできぬ状態で,時間が過ぎていくことになりました.
 ただ,原子力に近い分野の科学者であり人事では済ませられない,医療従事者の夫であり緊急対応時(余震などで)にはサポートする心構えでいなければいけない(実際はあまり役にはたたず),小さい子供(当時小1)の父親であり,この娘を守ると同時に,物事を正しく伝えなければならない責任(のようなもの)を感じたことも荷担したと(今になって振り返れば)思います.

 震災後しばらくたって,自分が行ったデータ分析をいくつか個人のtwitterやtwitpicsに投稿してみました.googledocsに少し詳しい説明も書いたりもしたのですが,(私が不慣れなせいもありますが)リンクがちょっとおかしくなっているものもありましたので,今後時間をみつけてすこしずつこちらに移行,再掲していこうかと思っています(もう古くなった情報もありますが,記録を兼ねまして).      (2012.09.11 記)

2012-09-04

- 小学校3年生の夏休み自由研究(親の視点で)-

<§1 自由研究は誰の宿題?>
 夏休みの自由研究の題材選びは,子供にとってというより,むしろ親にとって(笑)最大の懸案事項のようである.
子供が独力ですべてを行うのは,到底無理な話,高校生大学生だって満足のいくレポートを作れるかどうかは怪しいのではないだろうか?

 我が家もその季節となった.インターネットで探せば,いろいろなアイディアがあり,かえって迷う(笑).科学館の理科教室や工作教室もあれば,霞ヶ関官公庁の子供向け一般公開もある.田舎育ちの私にとっては,なんともめぐまれた環境である(むろん当の本人は自覚ない:笑).
 昨年(2年生)は,朝顔(だったかな?)の観察日記として,数枚の絵日記を書いたように記憶している(違ったかも .なんかの発芽だったかな? --- 親失格..).
 さて今年はどうしたものか...と,あるとき,セミの抜け殻をいくつか見つけ,背中の割れ方が,少しずつ違っていることに気づいたようである.娘は,はじめ,オスとメスで違うのかな?と思ったらしい.

そこで,これはチャンス(!)と思い,夏休みの自由課題として,セミの抜け殻について調べてみてはどうか?と釣ってみたら,食いついてきた. 
 以下のリンクがその宿題
本文末にも,埋め込んでみました.ただし,名前,場所は伏せています)
学校には,A3のケント紙4枚を2つ折りにして,A4で16ページ分のブックレットにしたものと,実際に採ってきた抜け殻の標本(みたいなもの)をお菓子の箱に並べたものとを合わせて提出.

<§2 方法>
 さて,問題は何を調べて,何を主張するか,である.インターネットで検索すると,「セミの抜け殻による種類と性別の見分け方」の解説がみつかった.そこでそのページをプリントアウトし,見分けられるか促してみた.
 [金沢市のページ]

種類は背中の割れ方ではなく(大人の石頭では"当然"ですませてしまうでしょう),主に触角でみわけられることに感動したようで,興味をもって一匹ずつしらべていった.触角で見分けるのは老眼初期の親にはけっこう辛い(笑).

東京都内で,場所範囲をきめて,8月中旬から2日連続,1週間おきに3クールで合計6日間,合計130匹ぐらいをあつめた.多くはミンミンゼミで,ついでアブラゼミ,ツクツクボウシがわずか数匹.1日目は夕方に全部あつめ,2日目は朝にとった.つまり,2日目は,その夜にでてきたものだけの数を数えられることになる. ---- もちろん,こんなことは,子供が思いつくようなものではなく,様々な誘導尋問で(笑),そっちへ持っていった.

親のインターネット調査では,東京ではアブラゼミが最も多いが,場所によってはミンミンゼミが優位となるところもある,ということである.オスメス比は1:1であることが常識のようだ.

そういった背景を知った大人の目からみると,このデータが意味することは
- 調査した場所は,まさにミンミンゼミ優位な地区であること.
- メスのほうが多いこと
- 連続する2日間の数があまりかわらない.数日分溜まっているのでは,と思っていたがそうではなさそう.
- ツクツクボウシ(の抜け殻)は極めてすくない.
- 第1クールが特に多い.気温などと関係するのだろうか?
など,面白い結果となっている.130ぐらいの個体数なので,定性的な統計精度としてはわるくないだろう.

 お盆に京都に行ったので,そこでも探してみた.場所による違いがあるのでしらべてみては,と(親が:笑)思ったからである.
 京都のその場所にはクマゼミがみつかり,ミンミンゼミはいなかった.

<§3 ここからが大変>
 さあ,問題は,これをレポートに仕上げることだ.実際のレポートに示したよう,以下の見出しをヒントとしてあたえ,その内容を考えさせることにした.
  1. 何の研究か
  2. なぜこの研究を選んだか
  3. セミの種類の見分け方
  4. オスとメスの見分け方
  5. 場所
  6. 観察方法
  7. 全データ・表
  8. 円グラフ (種類・オスメス)
  9. データからわかること
  10. 参考:京都のデータ
  11. 感想 思ったこと,次に調べたいこと
 ここだけ見ると,学術論文の構成とさして変わらない.こういった「考える筋道」を体験してもらうことも自由研究の利点ではあるが,同時に,自由な発想を奪うのではないか,というジレンマもある.

 ともあれ,ひとつづつ,まず,対話のなかで質問に答えさせるように誘導して,それを下書きとして書き下させるのだが,これがまあ大変(笑).
 例えば,京都のデータ.「場所による種類の違いを調べてみたかったから」というところにもっていきたかったが,断念(笑).「京都にクマゼミがいるかどうか知りたかったから」という発想から抜けない.調査時は,クマゼミがいることを知らなかったはずなのに,結果をみてしまって,その後時間がたって,夏休みが終わる直前に(笑)レポートに書こうとすると,思考の筋道がもう混乱してしまっているのだろう.
 抜け殻を取ったその場でメモ,下書きをさせることが重要だ,と感じた.

 さらに問題なのは「感想」.単におもしろかった,楽しかった,という「子供の純粋な気持ち」は,レポートとしては「バッテン(笑)」です.ですが,そこから何を学んだか,とか,世界観,自然観が変わったか,とかそんな「お利口さん」な文章を書かせたい邪念に満ちた(笑)親心は到底通じません.

 実際,セミの鳴き声を聞いて,どんな種類がいるのか,興味をもったり,旅行にいったときに,調べてみたい,と言ったり,取っているときには,なにか一皮むけたような印象ではあったが,その時期を逃すともうすっかり忘れてしまうようだし,文章にするのはさらに困難(まあ,大人でも大変といえば大変).

 「次に調べたいこと」についても,場所をかえて調べる根拠が「ミンミンゼミの割合」と書かせたかったし,そんな相談をしていたのだが,いざ書くときになると,いつのまにか,「ツクツクボウシがみつかるかどうか」にかわって,そこから発想が離れられない.--- 終わりのほうで,ツクツクボウシをみつけた喜びが強すぎたのかもしれないけれど..... この部分は,読書感想文が苦手なことと共通するように思える.


<§4 親の立場での一考>
 このような親による娘の観察記録から,自由研究を「研究らしく」行うのに必要な素養と能力が見えてきたように思う

(1) 背景:まず, 親は,子供が研究背景を知らない,ということを認識しておかないといけない.研究背景がないと,動機や方法論がはっきり決まらないのは確かだ.しかし,背景がない状態で,あれこれ考えさせるのは,子供の論理的思考力や想像力をはぐぐむよい機会なのでは,とも思う.

(2) 調べ物:インターネットで調べれば,今はすぐに回答が転がっている(玉石混交).親が調べてあげればあっという間,最短距離である.いわゆる「情報教育」も導入され,子供でもやりかた覚えればすぐやれるかもしれない.はたしてこれは好ましいことなのだろうか? 以前は,百科事典や昆虫図鑑で調べていたでしょう.一つのことを調べるまでに,その途中で,いろいろなページを眺め,関心を持っていった記憶がある.時間はかかるけれど,それで得るものも多いだろう.

(3) データの見方:どこに着眼するかは,洞察力を養う訓練になろう.対話式でうまく誘導していってはどうであろうか..

(4) 算数:グラフにしたり,パーセンテージを出せるようになりたいものだ.この自由研究では,近い値にまるめておおよその割合で円グラフを書かせた.百分率や割合の概念が定着していれば,電卓を使わせるのもいいのかもしれない. 

(5) 線やグラフ:我が子に限らず,この頃の子供は,まだ表の罫線や円グラフなど,スムーズには書けないと思う.親のほうがついイライラして,かわりに罫線だけ引いてあげたりしがちではないだろうか? 物差しで線を平行等間隔に引くのも大事な勉強だ,と腰をすえて見守ることも必要だと思う.

(6) 文章力:思ったことを論理的に表現できる能力が必要.このページで「何を主張すべきか」ということを把握して書かないと,思いついたことばかり書いて支離滅裂になってしまう.一言感想文や日記がいい練習になるかもしれない...が,苦手な子はその練習自体が苦痛....

(7) 漢字:3年生になって,習ってない漢字はたとえ知っていても書かなくなってしまっているような気がする.1~2年のころは,いろいろ知りたくて,自分で辞書をひいたりして楽しんでいた.今は「書ける?」と聞いても「知らない,どう書くの?」ではなく「それはまだ習ってない」と返ってくる.新しい漢字に出会った時が,それを学ぶチャンスだ,ということを意識付けることが重要に思える.(なんといっても母国語なのですから....)

<§5 おわりに>
 自由研究は,子供のため,というより,親が子供の全体的な達成度(=現実:笑)を知るいい機会でもあるのかもしれない.通知表の成績評価は,その学年その科目における相対的な達成度の指標なので,一つの課題を仕上げるのに(いわゆる「生きる力」),個人個人の能力のバランスの中で,どの項目が不足しているのか,知る機会はほとんどない.我が子の場合,他の項目にくらべ,(6)の文章力がかなり不足していることが,あらためて認識された.


<あとがき>
 これまで記したよう,いろいろ思うところはありますが, ただまぁ,興味をもって楽しく調査したこと,最後まであきらめずにがんばって完成させたことは認めてあげたいところです ----  親心として
 (それに他の子の課題をとりあげて評価して,いいたいこと言うなんで,とてもできませんから,ありがたいといえばありがたい --- 思った時に書き記しておかないと,記憶が薄れますからね...私も...)

 ちなみに,子供は夏休みでも,親は仕事があるので,お盆休みや週末を何日も費やして,付き合い,やっとここまで,って状況でした.完成は始業式前日の夜10時過ぎ頃.「完成日を書きたくない!(笑)」ってことで,8月ってことに.マンガにでてくるような夏休みの宿題騒ぎでした (^_^;) .       (終)

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追記(2014.8): セミ自由研究の続編ともいえる, 
- 小学校4年生の夏休み自由研究(親の視点で)- 
http://plasmankado.blogspot.jp/2014/08/blog-post.html
実施より1年遅れになりましたが,まとめてみました.セミの鳴き声の周波数にも着目(...するように「親が」話題を誘導した...).