- 富士山頂では90℃でお湯が沸いてしまって,おいしい御飯が炊けなくなる
- 真空にすると水が沸騰することを利用した真空凍結乾燥「フリーズドライ」
などが,よく知られています.沸騰に伴い,物体がもっている潜熱が奪われるため,温度が下がります.よって,条件によっては凍ってしまうこともあります.
- 真空にすると水が沸騰することを利用した真空凍結乾燥「フリーズドライ」
などが,よく知られています.沸騰に伴い,物体がもっている潜熱が奪われるため,温度が下がります.よって,条件によっては凍ってしまうこともあります.
では,逆に圧力を上げると,沸点はどうなるでしょうか?
実は沸点が上がっていきます.缶詰を加熱すると,内部は沸騰してなくても内圧があがり,破裂する危険が知られています.お湯をわかして100度で沸騰すると,100度のままなのは,沸騰によって奪われる潜熱と沸騰させるための加熱量が平衡するからです.
しかし蒸気の逃げ場がなく,圧力が高くなると,100℃以上に温度が上がります.圧力釜もその原理です.ですので,缶を火にかけるときは,"あらかじめ"蒸気を抜くための穴をあけておかないといけないわけです.すると加えた熱が沸騰に使われるので,水分がなくなるまで100℃で維持されるわけです.
しかし蒸気の逃げ場がなく,圧力が高くなると,100℃以上に温度が上がります.圧力釜もその原理です.ですので,缶を火にかけるときは,"あらかじめ"蒸気を抜くための穴をあけておかないといけないわけです.すると加えた熱が沸騰に使われるので,水分がなくなるまで100℃で維持されるわけです.
福島原発事故では逃がし安全弁(SR弁, SRV)によって原子炉圧力容器(PV)の蒸気の圧力をサプレッションチャンバー(SC)に逃がし,凝縮(温度が下がることで水に戻る)することによって,PVへの注水を可能にし,冷却を維持する試みが行われました.なぜなら,PVの圧力が高いと,ポンプの圧力をもってしても注水することができないからです.
ところが,70気圧で,沸騰せずに278℃になってた水を,SR弁を開いて減圧すると,たとえば1気圧では,沸点が一気に100℃に下がります.すると,急激な蒸発が始まり,冷却水が減っていきます.ですので,海水注入が準備万端の状態でSR弁を開くことが必須なのです(しかしながら福島原発2号機ではそれがうまくいかなかった. 直前の3号機水素爆発の影響もあるようす).
(参考)水の飽和蒸気圧曲線
縦軸[温度]に対する横軸[飽和蒸気圧]です.これは,横軸[気圧]に対する縦軸[沸点]とみることもできます.
そこで,本デモ実験では,圧力が高い状態から減圧されたときの沸騰の様子(これも減圧沸騰)を観察してみることにしました.
水を使う場合は,圧力が高くなりすぎて,とても簡易実験になりません.そこで,1気圧における沸点が78℃のエタノールを使うことにしました.沸点は100℃で2気圧程度になりますので,温度もその程度までの装置で大丈夫.ただし,エタノール蒸気は火災の原因にもなりますので,利用する量を少なくすることが必要だと思いました.メタノールは安いですが,有毒ですので,あまり気乗りしません.
(参考)エタノールの飽和蒸気圧曲線
装置は,当研究室で開発したプラズマ放電装置「ホローカソードグロー放電チャンバー」
通常,1/1000気圧ぐらいでプラズマを生成する装置です.>> 論文
放電の様子(Youtubeデビューです)http://youtu.be/H68-dBj_fys
本実験ではこれを改修しました.電極をはずし,採光する真空窓(ICF70規格コバールガラス製)をつけました.真空窓は本来加圧用にはできていませんが,真空はゲージ圧(差圧のこと)1気圧ですから,2気圧程度(大気圧との差が1気圧)の実験なら問題ないと判断しました.フラスコは球形になっていて,減圧に強くても加圧には弱いので,危険だと思います(しかもエタノール容量が多くなってしまう).
圧力は連成計(減圧側,加圧側両方のゲージ圧が測れる).手持ちのものが±1気圧のしかなかった.我々は通常加圧では使いませんから..
蒸発に伴い,潜熱がうばわれ,温度が下がりますから,すぐに沸騰がとまってしまいます.そこで,エタノールの量を少なく,かつ装置の余熱を大きくすることが工夫を要する点だと予測しました.
そこで,容器内部にアルミのブロックを追加し,その目的の助けにしました.本実験で使っているエタノールは30-40 ccぐらいだと思います.
元から本実験用に作れば,もっとエレガントにできると思います.
以下,補足情報
- 熱容量を維持するために
アルミニウム: 比熱 942 J/Kg/K @100℃ (金属の中では比熱が大きい)
エタノール :比熱 2400 J/Kg/K
エタノール : 気化熱 3.93x10^5 J/kg @ 78℃
(ぶつぶつ・・・はじめ2kgあったとして,半量の1kgが気化すると,残ったエタノールが単純計算で15℃ぐらい下がる.....それでも蒸発が続く必要あるから,78+15 = 93. できれば100℃以上にはしておく必要がある? かといって圧力は2-2.5気圧ぐらいまでで抑えたい.この数値から,感覚的に,エタノールの3倍程度以上の量のアルミがエタノールの中に漬かっていれば,余熱の効果である程度の速度で沸騰を維持できるのでは・・・・・・)などと考えながら設計構想を進めました....
もちろん,伝熱をちゃんと計算すれば温度の時間変化が予測できると思いますが,もともと「ありあわせ」のもので組み立てたものですので....まあこれでやってみるかと......
もちろん,伝熱をちゃんと計算すれば温度の時間変化が予測できると思いますが,もともと「ありあわせ」のもので組み立てたものですので....まあこれでやってみるかと......
----実験の様子-----
減圧前: チャンバー表面 145℃(逃げる分があるので,多少高めにしておかないと内部が暖まりません)
ポート 105℃ = エタノール沸点(気液平衡状態で温度が上がっていった印象です)
気圧 2.57 atm (ゲージ圧1.57 atm推定)
減圧後: チャンバー表面 136℃
(ヒーター保持にもかかわらず下がってますので,潜熱が奪われたことがわかります)
ポート 100℃ (余熱で高めに維持されています)
気圧 大気圧
----------------------
エタノール内部から,一斉に蒸発がはじまっているのがわかります.
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